忍者ブログ

あとかた

二次創作の小説と日常の戯言

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

消えゆく言葉

炎熱/小話


 気づいたのは、偶然だった。

 眠りから覚めようとしたときに、優しく頬を撫でる手に気づいた。その手はひどく優しく、壊れものに触るみたいにそっと、そっと、俺を撫でていく。
 温かな手は、俺をもう一度眠りに落とそうとその威力を発揮したけれど。

「熱斗、」

 小さく、俺を呼ぶ声に眠気は吹き飛んでしまった。
 それほどに、心を揺さぶるほどの声で、



「熱斗、」

 何でそんな風に切なそうに俺を呼ぶの。
 何でこんな風に恐る恐る俺に触るの。

「熱斗、」

 いつもみたいに、もっとちゃんと呼べよ。
 そうじゃなきゃ、どうしたらいいのか分からなくなる。

 せめて。
 せめて、

 起きている俺をその声で呼んで。
 そうすれば、俺は、どうしたんだって聞けるのに。


「ねっと、」


 悲しげに、俺を呼ぶ炎山に、なんでか泣きそうになった。


(えんざん、)




【消えゆく言葉】

(なぁ、俺だって)(おまえを呼んでるのに)
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新記事

(01/04)
(11/15)
(12/24)
(12/24)
(11/01)

プロフィール

HN:
ひとみ
性別:
女性

サーチ

拍手

メールフォーム

カウンター

アクセス解析

Copyright © あとかた : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]